昨日の午前中は、
あちらこちらから、メールや電話やらで、スケジュールや追加仕事の提案などが入り、
調整やお断り、回答待ちで、てんやわんや。
昼前には、いやになって
(もう、全部、やめてしまおう!)
お昼ごはんも面唐ュさくなって、
一番近い、おなじみのラーメン屋さんですませてしまうことに。
注文をして待っていると、ほどなくして奥さんがラーメンを持ってきました。
そして
小声でこういうのです。
(チャーシュー、一枚、足しといたから。
いつも来てくださって、ありがとうございます)
おかげさまで、ご機嫌がすっかり直り、
午後にはテキパキと課題を解決できた、
簡単な私なのですが、
きっと、
顔や姿に何かが表れていたんだろうな…と、
心のコントロールの未熟さと
それを表に表したことを、大きく反省しています。
それにしても、
ラーメン屋の奥さんはすごいと感じたのです。
そして、
チャーシューの力も。
***
そして、
こんな小説のくだりを思いだしたりしたのです。
女の子は、間もなく帰り仕度をはじめた。花束をゆすぶって見た。花屋から屑花を払いさげてもらって、こうして売りに出てから、もう三日も経っているのであるから花はいい加減にしおれていた。重そうにうなだれた花が、ゆすぶられる度毎に、みんなあたまを顫わせた。それをそっと小わきにかかえ、ちかくの支那蕎麦の屋台へ、寒そうに肩をすぼめながらはいって行った。
三晩つづけてここで雲呑を食べるのである。そこのあるじは、支那のひとであって、女の子を一人並の客として取扱った。彼女にはそれが嬉しかったのである。
あるじは、雲呑の皮を巻きながら尋ねた。
「売レマシタカ」
眼をまるくして答えた。
「イイエ。……カエリマス」
この言葉が、あるじの胸を打った。帰国するのだ。きっとそうだ、と美しく禿げた頭を二三度かるく振った。自分のふるさとを思いつつ釜から雲呑の実を掬っていた。
「コレ、チガイマス」
あるじから受け取った雲呑の黄色い鉢を覗いて、女の子が当惑そうに呟いた。
「カマイマセン。チャシュウワンタン。ワタシノゴチソウデス」
あるじは固くなって言った。
雲呑は十銭であるが、叉焼雲呑は二十銭なのである。
女の子は暫くもじもじしていたが、やがて、雲呑の小鉢を下へ置き、肘のなかの花束からおおきい蕾のついた草花を一本引き抜いて、差しだした。くれてやるというのである。
彼女がその屋台を出て、電車の停留場へ行く途中、しなびかかった悪い花を三人のひとに手渡したことをちくちく後悔しだした。突然、道ばたにしゃがみ込んだ。胸に十字を切って、わけの判らぬ言葉でもって烈しいお祈りをはじめたのである。
おしまいに日本語を二言囁いた。
「咲クヨウニ。咲クヨウニ」