がんばろう!岩手のスポーツ

岩手スポーツ応援団長を勝手に名乗る平藤淳の個人的なブログです

キャリアトランジション

「今年一年のスカウト」という、自己理解のお話を、12月29日のページに記載しています

「自己理解」を促し、それに基づいて「キャリア」を獲得・探求し(させ)キャリア・トランジション(転機)を乗り切る(させる)ための書籍を知っていますのでご紹介します

この本は「運とは"備え"がチャンスに出会うこと」をキーフレーズとし、ワークシート書き込み方式により自己理解などを進めてゆく本です

ほとんどの人は、ワークシートに記入してゆくに従い、自分に何の「キャリア」もないことがはっきりとし

今の職場をクビになったら、もう誰も採用してくれないだろうな〜ということが判明することでしょう

「いまさらキャリアアップかよ」とこの歳になって言わなくてもすむように、若い人たちをきちんと教育する必要がありますね

「続きを読む」に書評が折りたたんでいます長いですが、興味のある方はお読み下さい

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スポーツ選手のためのキャリアプランニング

▼A・プティバ他 著、田中ウルヴェ京、重野弘三郎 訳

▼大修館書店

運とは"備え"がチャンスに出会うこと

私が選手をしている時には「選手はスポーツのことだけを考え努力すればよい。その努力に、進学・就職など将来のすべての結果がついてくる」と教えられ、さらに、「水を飲むと疲れる」・「肩を冷やすとピッチングに影響がある」などといった誤った常識のもとで、スポーツを行ってきました。後者については、今では科学的に否定されており、そのようなことを言う人はいませんが、前者については、スポーツの場面に限らず、今でもよく耳にするような気がします。

確かに、選手のパフォーマンスや障害に関する医・科学分野の講習会などは頻繁に行われ、私たちはその分野の研修を積む機会に恵まれています。一方、スポーツ選手の生涯に大きな影響を与えるであろう進路の選択、あるいは、スポーツ選手が選手でなくなったときの進路選択などについて、私たちが教育・訓練を受ける場はほとんど見当たりません。しかし、大学進学や就職などの「トランジション」、あるいは、選手の故障や企業チームの廃部などによる予期せぬ「トランジション」をこれからたくさん出会うであろう高校生こそ、トランジションに対する十分な準備をしておく必要があることは、容易に想像できます。

「運とは備えがチャンスに出会うこと」これがキャリアプランニングのキーフレーズのようです。最も重要なことは「備え」であり、その第一歩は「自己の理解」に始まります。この本では、要所に準備された多くのワークシートへの書き込みにより、内容の理解をすすめる方法がとられています。書き込んでゆくうちに、自己の持っているスキルや、これまでの経験、人的・経済的な環境までをも含めたアイデンティティーが浮き彫りにされ、これからの課題も明らかになります。その自己理解に基づき「キャリア」を探求・獲得してゆくこととなりますが、キャリア獲得後も、自己のスキルを磨いてゆくなど、他のキャリアへのトランジションの準備を続けることが「備え」とされています。

「同期入社した場合でも、人それぞれスタートラインは違っている」と言う発言を耳にしたことがあります。これは「備え」の違いがもたらすものだと思います。著者は、スポーツから得られたスキルは他のキャリアにも移行可能なスキルであると評価しています。つまり、スポーツ選手は、スポーツで得た様々なスキルを基盤としたうえでの「備え」ができるというアドバンテージを持っています。その利点を積極的に生かすことにより、「より前方のスタートライン」に立つことができると考えられます。私たちはその第一のサメ[タにならなければなりません。

この本は、大きく3部構成となっています。はじめは「人生とスポーツのトランジション」、次に「自分探しの旅とそのプラン」、最後は「キャリア取得に向けて」と題されています。第1部は、スポーツ選手の具体例が多く引用されており、特に、スポーツ関係者に向けて書かれていますが、2部・3部は、独立して産業カウンセリングあるいは学校の進路指導関連の著作とすることもできるような内容となっています。

ご一読をおすすめするとともに、ご自分でワークシートを記入し、自己探求を行い「備え」について考えてみることもおすすめします。(通巻269号保健体育教室 2005年・第4号 2005/11/25 大修館書店)