ハンガリーのブダペストで行われていた、パリ・オリンピックの個人4競技(ブレイキン、BMXフリースタイル、スケートボード、スポーツクライミング)の最終予選大会であるオリンピック予選シリーズが、今日、終了しました。
スポーツクライミングの伊藤ふたば選手(デンソー岩手、盛岡中央高校卒←盛岡市立松園中)は、残念ながら、出場権獲得ならず。
これまで、よく頑張ってきました。心から讃えます。
岩手スポーツマガジン「スタンダード」の2019年11・12月号の私の連載コラム「がんばろう!岩手のスポーツ」で、
東京オリンピックへの出場権を獲れなかった伊藤さんに向けた記事を書きました。
今回も同じことを、岩手のスポーツファンの皆さんにお伝えしたいと思って、もう一度、ここで、引用します。
なお、
今回は、
ホッケーの田中海渡さん、瀬川真帆さん、射撃・ピストルの佐々木千鶴さん、カヌーの水本圭治さん、そして、今後オリンピックには挑まないことを表明した陸上・競歩の高橋英輝さんの5人の岩手アスリートにも向けたものとして読んでいただきたいのです。
締切を延ばす
世の中には「締切り」というものがあります。これについてはいろいろな見方や考え方があるでしょうが、私は大好きです。
この原稿も、締切り日の提出を目標に書き進めているところですが、もしも締切りがなければ、私はこの原稿にずっと手を入れつづけることになるでしょう。原稿は良くなってゆくに違いないのですが、その代わり、新しい見方や考え方を文章にして皆さまにお伝えするというチャンスを失うだろうと思っているからです。発想や枠組みを新しくする区切りとしての締切りが、大好きなのです。
さて、東京オリンピック開催まで10か月を切り、出場内定を勝ちとった選手もでてきました。岩手県出身選手では、カヌー競技スプリントの水本圭司選手(チョープロ=長崎県、岩手県立不来方高校卒・矢巾町出身)が八月の世界選手権でオリンピック出場権を獲得しています。(10月7日時点)
他の競技でも、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)などの国内での大会や国際大会などでの選考が始まっていて、カヌーの他にも、水泳、陸上競技、セーリング、スポーツクライミング、サーフィン、レスリングなどでいち早く代表内定を取った選手がいますし、すでに出場枠を獲得した団体競技でもメンバー選考が進んでいます。
これからまだまだ、選手選考が続いてゆきスポーツから目が離せません。一人でも多くの岩手県関連の選手が出場できるよう、応援していきたいと思っています。
考えてみると、オリンピックの選手選考も「締切り」と同じような性質を持つもののようです。
選考会のスケジュールが締切りですし、そもそも東京オリンピックが大きな締切りです。それらに向けて選手やコーチや関係者が計画を立てて練習に励み、締切り日にすべての力を発揮できるように準備して行くのです。選考の可能性を持つ選手たちは、息もつけないような時間を過ごしていることでしょう。もう一息、がんばってほしいと思います。でも、一方では、必ずしも締切りを東京に置かなくてもいいのではないかとも考えています。
ずいぶん前です。2012年に盛岡でサッカー女子日本代表の元監督・佐々木則夫さんの講演を聞く機会に恵まれました。ワールドカップの優勝監督です。それはそれは素晴らしいお話でしたが、その中に「走って 当たって ベスト4」というフレーズが何度か出てきました。日本女子サッカーは「走って当たって」という考え方・戦い方で世界ベスト4の力をつけたそうです。しかし、佐々木さんは、同じことをしていては世界一どころか決勝進出も難しいだろうと考え、新しい枠組みでの強化を行い世界一になったのです。サッカーワールドカップは、オリンピックやラグビーワールドカップと同じく、四年に一度開催されます。もしかすると、毎年開催されないのは、新しいことに向かうための四年を与えるのでその期間に新しい考え方でチーム・選手を育ててきなさいという意味を持つ期間なのかもしれません。
オリンピックに出られる人はごく僅かな人たちです。残された時間を本番で最高のパフォーマンスを発揮するよう頑張ることでしょう。一方、今度の東京大会に出場することが叶わなくなった人たちもいるのです。実は、その人たちには、次の「締切り」がいち早くやって来るのです。東京の次の夏季オリンピック・パリを目指して締切りを四年間延ばし、再スタートをきることができます。
新しい締切りを目指して再スタートをきる人たちも応援してゆきたいものです。
(岩手スポーツマガジン「スタンダード」2019年11・12月号の
連載コラム「がんばろう!岩手のスポーツ」全文)