がんばろう!岩手のスポーツ

岩手スポーツ応援団長を勝手に名乗る平藤淳の個人的なブログです

ピンバッジは空振り/「風化」させないために

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先週、会議に行ってきました。
’93世界アルペン開催記念大会実行委員会という会議です。
せっかくなので、1993年に岩手県の雫石スキー場で行われたアルペンスキー世界選手権のマスコットキャラクターのピンバッジをつけていったのですが、だれにも気づかれず。ああ。

世界選手権の開催を記念する大会

実行委員会の名前を見てわかるとおり、この大会は、岩手県雫石町の雫石スキー場を会場にアジアで初めて開催された、世界選手権の記念大会です。
そして、
国内では数少ない、ジュニアのスピード系レースです。

■大会詳細は ここ(Wikipedia)

今年の2月に予定されていたものの、感染症拡大防止の観点から中止になった大会が「第28回」でしたので、
今シーズンの大会(2022年2月)は、29回目となるものです。

■中止になった昨シーズンの大会は
「世界アルペン開催記念」第28回全日本選抜ジュニアスキー選手権大会 アルペン競技 種目 スーパー大回転 … 要項はここ(SAJ)

29回目の今シーズンが最後の大会に

実は、昨シーズンの第28大会をもって、世界アルペン開催記念大会は終了することになっていました。
しかし、
昨年12月、新型感染症の関係で、大会中止が中止になりました。
その決定をする時に、
最後の大会を、翌シーズン(つまり、今シーズン)に繰り延べて開催することも決定されています。

大会終了の理由

昨年の実行委員会の議題に「’93世界アルペン開催記念大会の終了について」という議題がありました。
乱暴にかいつまむと

■開催趣旨
・東洋初の開催となった世界選手権のレガシーをつなぐ
・地元選手の育成を図る
盛岡市滝沢市雫石町の地域振興を図る
■終了理由
財源不足全日本スキー連盟岩手県スキー連盟、三市町からの負担金と参加料ではまかないきれぬ。また、総務庁からの「スポーツ拠点づくり自立促進事業助成金」も助成期間が終了し、開催のための財源が厳しい。
人員不足陸上自衛隊岩手駐屯地からの協力隊派遣打ち切り、雫石町職員の業務としての派遣打ち切りにより、競技役員が不足する。

ということで、令和2年度大会をもって終了することが実行委員会で承認されていたのです。

20世紀型大会運営

運営費は自治体からの負担、係員に役場職員や自衛隊員などの公務員を動員して…という、アルペンスキーの世界選手権の運営形態を小さくしたような、「20世紀型大会運営」が、行き詰まったのです。
動いているものを再構成しなおすことは大変なことですが、関係者は、大会の開催趣旨を全うするため、一生懸命に努力してきました。
しかし、
今の世の中に合わなくなってきた大会運営のフレームワークに、手を付けることはできませんでした。
残念です。

二つのことを風化させない

風化させてはいけない…スポーツ界では良く耳にします。
オリンピックの開催を、国民体育大会の開催を、全国障害者スポーツ大会の開催を、地震津波感染症により大きな被害を受けたスポーツ活動を…
でも、
主語が大きすぎるというか、範囲が大きすぎるというか、具体性に欠けます。
具体的に何を風化させてはいけないのか、
言葉をかえれば、何をし続けなければいけないのか、ということを、きちんと考えなければなりません。
今回の、
’93世界アルペン開催記念大会の終了に伴って、風化させてはいけないことは、私は、次の二つだと考えています。

国際大会を契機に行いたかったこと

先ほど、述べましたが、記念大会の開催趣旨は次の三つです。

・東洋初の開催となった世界選手権のレガシーをつなぐ
・地元選手の育成を図る
盛岡市滝沢市雫石町の地域振興を図る

(令和2年度’93世界アルペン開催記念大会実行委員会総会議案書,2020/11/27)

一つ目の項目は、具体性にかけていて、何がどうなったらいいのかが、私には、わかりません。
三つ目の項目も、よくわかりません。
負担金を出してもらうための方便のような気もします。

私は、
二つ目の「地元選手の育成」を行うこと…これも具体性にやや欠けるのですが…こそが、国際大会を契機に行いたかったことであり、記念大会がなくなっても、形を変えてし続けなければならないことだと考えています。

大会が継続できなくなった理由

大会が継続できなくなった理由は、財源と人員の確保が「20世紀型」であったからです。
30年前は、30年後のことを考えていなかったのかもしれません。
県や市町村がお金や人を出さないことは、当時は、考えられず、「持続可能性」を疑うことはなかったのでしょう。
当然です。
「持続可能」という言葉は、今世紀になってから一般的になったようです。

「持続可能な発展」が環境問題や途上国の開発問題を扱う専門家の間で用いられるようになったのは1980年代からですが、より幅広く社会全般で用いられるようになったのは2000年代に入ってからでした。

「持続可能な発展」と「持続可能性」,国立環境研究所,https://www.nies.go.jp/kanko/news/32/32-6/32-6-04.html

風化させてはいけないことは
「終期を定めない計画」を立ててはいけない、
そして、
フレームワークを見直す必要の有無を、毎年、確認すべきである、
ということだと考えます。

まとめ

記念大会の実行委員会メンバーですら、
マスコットのピンバッジに気付いてくれない、
あるいは、
マスコットそのものを知らないのです。
当たり前です。30年ほど前のことですから。
「レガシーをつなぐこと」も難しいのです。

何の気なしに、おおざっぱに使っている「風化」「レガシー」という言葉ですが、
風化させない「こと」を明らかにすることが、
残すべき「レガシー」を具体化・可視化すること
だということに気づいたのです。

がんばりますよ、がんばりましょうね!