がんばろう!岩手のスポーツ

岩手スポーツ応援団長を勝手に名乗る平藤淳の個人的なブログです

ひとりでダッシュできる場所/インクルーシブ大会で気づいたこと

8月24日、盛岡市立総合プールで「盛岡市総合プールインクルーシブ水泳記録会」と「日本パラ水泳通信総合記録会地域インクルーシブ型(東北)」が併催されました。私も会場に足を運びました。

■インクルーシブとは

この記録会では、障がいの有無や区分を問わず、種目・距離と性別だけで組分けされます。
つまり、
みんな一緒に泳ぐ水泳大会です。
写真の「スタートリスト」を見てください。

大会名が映し出された電光掲示板とプールの背景に貼り付けられた、スタートリストの一部

スタートリストを見ると、名前や所属と並んで「クラス名」「ステータス」「CoE」といった記載があります。クラス名からは、肢体・視覚・聴覚・知的などの障がい区分が分かります。

たとえば、自由形2組には、聴覚障害のあるスイマー、中学生、身体障害のスイマーなど、さまざまな区分の6人が並んで出場していました。平泳ぎ2組も、視覚障害・知的障害・身体障害、そして障害のないスイマーが一緒に泳ぎます。

岩手県内では、このような形態での競技会はあまり目にすることがありませんが、
大会名についている「インクルーシブ」とは、こういうことを示しているのです。

また、オリンピックの競泳ルールだけでは泳げない人もいるため、ルールを緩和・追加し、多くの人が参加できるよう工夫されています。スタートリスト右端の「CoE」欄はその例です。
「A12」は「入退水の際に介助が必要」かつ「平泳ぎでは脚の動作に制限がある」ことを示します。ほかにも「タッピング用具を使用」「背泳ぎのスタート時に補助具を使用」といった特例が選手ごとに定められています。

このように、
水泳競技では
機能的にできない事があっても、今、使える力を使ってスタートからゴールまで泳ぐことができれば、大会に出ていいよ…という考え方です。
素晴しいですね。
なお、クラスとかCoEについて知りたいなと言う人は、この下線部をタップして 「JSFDクラス分けマニュアル」を見てください。

■プールとアリーナで気づいた「環境」

・いつまでも泳ぐスイマー

この日、特に印象的なスイマーがいました。東京の企業チームに所属する女性で、クラスは「SB11」、CoEは「T」。視覚障害が重く、ターンやゴールではタッパー(タッピング棒で体に触れて合図を送る人)が必要です。

スタート台までは誘導を受けますが、飛び込みからゴールまでの泳ぎは一人の力。ときどきコースロープに触れ方向を確認しながら、力強く泳ぎ切ります。視覚以外の障がいはないのです。見事な泳ぎでした。

レース後、ふと練習用プールを見ると、彼女はまだ泳いでいました。
タッパーと何度もやり取りしながら、繰り返し、繰り返し。クーリングダウンにしては長すぎるほどでした。

レース後のクーリングダウンにしては、およぐ時間が長すぎます。
(なぜ、こんなに泳ぎ続けるのだろう…)

・ダッシュする電動車いすユーザー

大会の様子を背景にしたプログラム表紙の写真。奥・中央にはランプを使って競技している電動車いすユーザーが写っている

8月10日に、盛岡市で「第1回岩手県みんなのボッチャ選手権大会」という、これまた、インクルーシブな大会が行われた時のことを思い出したのです。

電動車いすを使い、手でボールを投げられないため「ランプ」と呼ばれる雨どいのような器具を使ってでプレーする選手がいました(写真、奥・中央)。
試合がない時間、
その選手はコート脇の50mほどのスペースを電動車いすで全速力。
往復を何度も繰り返します。

何をしているのですか?と聞くと
「ダッシュしています」
さらに「楽しいです!」と笑顔が返ってきました。

・トップスピードを出せる場所

プールにもアリーナにも、彼らにとって「安心してトップスピードを出せる場所」がありました。

街の中には、視覚障害のある人が一人で全力で移動できる場所はほとんどありません。電動車いすを安全にフルスピードで走らせる場所も見つけにくいでしょう。スポーツ施設でさえ、衝突の危険を避ける配慮は十分とは言えません。

だからこそ、
彼女はプールで何度も泳ぎ続け、彼はアリーナの壁際を思いきり走るのです。

やってみたいと思ったことを、実際に試すことができる環境がある。
そこに気づいて実行する。
素晴らしいことだと思います。

そして
障がいの有無に関わらず、私たちにとっても「ひとりでダッシュできる場所」は意外と少ないのではないかと考えました。

「ひとりで思いきりダッシュできる場所」…その存在を大切にしたいものです。